「神の国の条件」(マルコ 10:17〜31、第一ペテロ 1:1〜4)
8章の後半から十字架への道を歩み始めたイエスは、弟子たちに、地上の原理と天上の原理をわかりやすく語られました。
一人の宗教的に良い教育を受け、なおかつ社会的地位と財産とが与えられている青年の訪問を受けました。
「良き師よ、永遠の命を受けるために、何をしたら良いでしょうか」(マルコ10:17)
福音書においては「永遠の命を受ける」と「神の国に入る」と「天国へ行く」とは同一の意味に語られています。この青年は、極めて真面目にイエスに天国へ行く道を聞いたのでしょう。しかしイエスは、地上で宗教的に、また社会的に良いことをしたら、天国に行けるのではない。この世の原理を放棄するときに、神の国の原理で生きることができるようになるというテーマをお語りになりました。
「あなたに足りないことが一つある。帰って持っているものを皆売り払って、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に宝を持つようになろう。そして、私に従ってきなさい」(21節)
主に従う道は、身軽でなければならないということですね。そしてさらに言われました、
「富んでいるものが、神の国に入るよりは、ラクダが針の穴を通る方が、もっとやさしい」。(21節)
[神の国の条件](天国パスポート)
①地上にありながら、天上の生命で生きること。イエスは常に一人山に登り、静かなところで祈りによる神との交信を重視されました。マザーテレサは、日々の祈りの生活を大事にするように語っています。
②「あなたに足りないことが一つある」と主は誰もが持っている地上的なこだわりについて指摘しています。単に富を捨てるという問題ではなく、誰しも心の中に地上的な重荷を抱えているものです。
③逆説的恵み「失うことが得ること」、手放すことによって受ける恵みがあります。
1967年10月10日は私の回心記念日です。自我の谷間に落ち込んでしまい、何の自信もなく、感謝もなく、希望もなく、能力もない日々を過ごしていた20歳の私は、この日、人生最悪の時を過ごしていました。自殺願望がありましたが、死に切れない日々でした。19時40分に、大久保の淀橋教会にふらりと入ったことがきっかけで、自分ではなくキリストを見、自分の願望ではなく、神の御心に身を委ねていく神の国の価値観で生きる者と変えられました。その日から「死から命へ、不可能から可能へ、闇から光へ」と変えられたのです。
皆様も、それぞれ地上の発想から神の国の原理で生きる体験をなさっていると思います。もしそうでなければ「あなたに足りないことが一つある」と主は言われるのですね。
イエス様が示されたこの素晴らしい大転換をあなたも経験されますようにお祈りしています。
小田 彰