2021.9.5

テーマ「広い心で」

聖書 第二 コリント6章11〜13節

 

 先週「何も持たないようでいて、すべてのもの持っている」(第二コリント6:10)というような力強い伝道者魂のメッセージを聞きました。

 その後に、短いパウロの気持ちを表した言葉が挿入されています。わずか3節ですが貴重な言葉です。

「コリントの人々よ。あなた方に向かって私たちの口は開かれており、私たちの心は広くなっている。あなた方は私たちに心を狭められていたのではなく、自分で心を狭めていたのだ。私は子供たちに対するように言うが、どうかあなたがたの方でも心を広くして、私に応じてほしい」(11〜13)

 

 伝道者パウロはコリント教会との摩擦を通してキリストの謙遜を学びました。彼は自分の言葉でその正当性を語り論破する事はできましたが、謙虚に親しく心を開いて語り合い和解したいと語りかけています。

 

 聖書協会共同訳では「私たちはあなた方に率直に語り、心を広く開きました」と訳しています。

 前々回の5章において、「和解の務めを担う使者である」と言いました。そうであるのにコリント教会の人と和解できないのでは良い証になりません。教会の創設者であり、偉大な指導者であり、多くの教会員を信仰に導いた霊的親であるパウロが、子供に語るようにへりくだっているのです。それは彼自身がキリストを十字架に付けた迫害者であったのに、赦されて今伝道している「赦された罪人に過ぎない」という事実が彼を導いているのです。

 

 さて人間関係のもつれは常にありますし、最近のニュースを見ると、ほとんどが人間関係におけるトラブルの結果です。しかし残念なことに、キリスト教会においても信徒同士の争いや、牧師と信徒の意見の食い違いなどによって、キリストの体である教会が傷ついている場合があります。

 1517年マルチンルターの宗教改革においても、結果的にローマ法王と決裂し30年戦争に突入しました。英国国教会が誕生した理由も、ヘンリー8世が6人もの妻を代えたことに対してローマ法王から破門されたことがきっかけです。今日日本の300を超える教派の中にも、指導者同士の断絶や意見の食い違いがその原因となっていて、決して修復されていないことが多いのです。

 いろいろな理由があるにせよ、徹底的にへりくだってキリストの謙遜を体現することができない現実があります。

 教会の中における紛争の原因は、傲慢、プライド、セクト争い、権力と利益保持、無知、冷淡さ、愛と信仰の欠如、そして言葉の過ちなどを上げることができます。

「子供に話すように言いますが、あなた方も同じように心を広くしてください」と語ったパウロの和解の努力を心に留めたいと思います。

 

 イエス・キリストは「あなた方の父なる神が慈悲深いように、あなた方も慈悲深いものとなれ。人を裁くな。そうすれば、自分も裁かれることがないであろう」(ルカ6:36、37)と大胆に和解の道を示されました。へりくだって考えの違う人と握手すると言う事は本当に大変なことだと思います。しかしそれが聖書が語るメッセージでなのです。「和解の手」こそ今私たちに必要なことなのです。

 

 御言葉を聖霊がかたりかけて下さるようにお祈りしています。9月も力強く歩みましょう。祝福をお祈りしています。

小田 彰